問題32/第21回(平成30年度)/精神保健福祉士(専門)
精神保健福祉相談援助の基盤
次の事例を読んで,問題30から問題32までについて答えなさい。
来日した留学生Bさん(24歳,男性)は,日本語学校に入学し,生活習慣の違いに不安を抱えながらも新生活を始めた。居住している留学生会館があるN地区は,外国籍の労働者や留学生が多く,国際結婚をした家族も多数居住している。Bさんは,同じ日本語学校の留学生Cさんたちともすぐに仲良くなり,当初あった不安も減り孤独を感じることなく,慌ただしいながらも暮らしに馴染んでいった。(問題30)次の記述のうち,この場面におけるD精神保健福祉士の発言として,最も適切なものを1つ選びなさい。
来日して3か月が過ぎた頃から,Bさんは気分が落ち込み,仲間たちと次第に距離をとるようになっていった。その様子を心配したCさんが,Bさんに付き添い日本 語学校の保健室を訪れると,留学生支援で実績があるN地区のUクリニックを紹介された。
Uクリニックの医師は,Bさんに薬物療法の必要性を伝え,定期的な通院を勧めた。インテークを担当したD精神保健福祉士は,言語や生活習慣の違いを特に注意しながら,Bさんと面接を行った。(問題31)
Bさんは,D精神保健福祉士との面接を通じて,二人にサッカーという共通の趣味があることも分かり,徐々に打ち解けていった。その後,Bさんは,自分の不調をう まく言葉に表すことができず苦しかったことや,日本での手続が複雑で困ったこと,日常生活で困惑したことなどを話すようになり,元気を取り戻していった。
ところがある日,BさんはD精神保健福祉士に,「留学生同士でも違う」,「みんな一緒にするな」と語気を荒げた。そして,普段はあまり使わない母国語も交え,「この地区では同じ国の出身者と集まることが多い」,「留学生同士でも仲間に入れない人や,孤立している人がいる」と続け,これまで感じていた違和感や疎外感について訴え,肩を落とし,やがて沈黙し涙を浮かべた。(問題32)
Bさんは通院を継続し,半年後には落ち着いて仲間たちとも付き合えるようになった。最近の面接では,「趣味のサッカーをいかし,地域で交流を深められないか」と前向きな発言が聞けるようになってきている。