問題54/第21回(平成30年度)/精神保健福祉士(専門)
精神保健福祉の理論と相談援助の展開
次の事例を読んで,問題52から問題54までについて答えなさい。
発達障害者支援センターのF精神保健福祉士は,Gさん(35歳,女性)から息子のHさん(7歳)のことで相談を受けた。Gさんの話は,「Hは,幼少期から人見知りやこだわりが強かったが,障害とは思っていなかった。保育園でもささいなことで泣き出していたが,園長から,「Hさんの個性として受けとめましょう」と言われていた。しかし,地元のV小学校に入学すると,音に過敏で先生の話が聞けない,ノートが取れない,場面の切替えができない,運動会に参加できないなど,様々なつまずきがみられた。そして,2年生になると授業についていけなくなり,登校を嫌がって自宅でテレビゲームばかりするようになった。そこで,専門医を受診したところ,自閉症スペクトラムと診断された」とのことである。Gさんには診断にショックを受けながらも,無理やり登校を強いてきたことを責める様子がみられた。そして,「私はこれからHにどのように接したらいいのでしょうか」とF精神保健福祉士に尋ねた。(問題52)次のうち,V小学校の児童への取組を示すものとして,最も適切なものを1つ選びなさい。
V小学校には特別支援学級はなかったが,GさんもHさんも転校は望んでいなかった。そこで,F精神保健福祉士はV小学校と協議の場を設け,Hさんが安心して学校に通うための対応を提案した。(問題53)
Hさんが4年生に進級した時に,特別支援学級が設置され,Hさんは通常の学級との併用を開始した。ところが,しばらくするとHさんは,「なぜ自分だけが他の教室に行くの?」と特別支援学級に行くのを拒み,通常の学級での個別の配慮も嫌がるようになった。Gさんは,Hさんの言動に驚く一方,Hさんが他の児童と自分を比べざるを得ない状況に心を痛めた。Gさんの思いを聞いたF精神保健福祉士は,この件についてV小学校と協議を重ねた。そして,Hさんと同じ配慮が望ましい児童が複数いることも分かり,同様の配慮を教室環境や授業展開に取り入れた。結果として,Hさんが落ち着いて学習できる環境は,他の児童の学習効果につながるものでもあった。
また,この取組を通して,児童たちが,Hさんの困り事や支援の意義を理解できるようになったことは大きな成果であった。(問題54)