問題60/第23回(令和2年度)/精神保健福祉士(専門)
精神保健福祉の理論と相談援助の展開
次の事例を読んで、問題58から問題60までについて答えなさい。
政令指定都市のP市保健所で働くL精神保健福祉相談員(精神保健福祉士)(以下「L相談員」という。)に、P市に住む父親のMさん(80歳)と長女のAさん(50歳)の事で、民生委員から相談があった。「ごみが庭にあふれ悪臭もあり、近隣住民が不安に思っている。Mさんは外に向かって怒鳴るし、Aさんの姿を見なくなった。精神的な病気があるかもしれないので保健所に相談に来た。MさんとAさんが心配だ」とのことだった。次の日、L相談員はMさん宅を訪問した。(問題58)次の記述のうち、L相談員がP市協議会で最初に提案したコミュニティソーシャルワーク実践の内容として、適切なものを1つ選びなさい。
玄関から声をかけるとMさんは、「俺の勝手だ。ほっといてくれ」と強い口調で言いドアを閉めた。Aさんの姿は確認できず、名刺を置いてMさん宅を離れた。L相談員は、Mさん親子についての情報収集や今後の支援方法を、関係機関と検討する必要があると判断し、地域包括支援センターに連絡した。その結果、地域ケア会議が開かれることとなり、初回会議にはL相談員の他に地域包括支援センターの保健師、社会福祉協議会の福祉活動専門員、P市高齢福祉課の担当者、民生委員が参加した。(問題59)
L相談員が訪問を続けると、Aさんが玄関先に出てくれるようになった。2か月が過ぎた頃Aさんから、「何とかしようと思っていました。でも父は怒りやすくなり、話もかみ合わなくて。私も気分が落ちて、朝は布団から出られなくなって。2年前に15年ほど勤めた会社を辞めたんです。それから、どうしようもなく…」と話があった。詳しく話を聴くと、Mさんには認知症、Aさんには精神疾患の疑いがそれぞれあり、支援を希望していることが分かった。
チームによる支援を続け1年が過ぎた。少しずつ居住環境は改善されつつある。また、現在Mさんは通所介護(デイサービス)を利用しており、Aさんは精神科クリニックへ通院を続けている。Aさんは、「気持ちが落ち着いてきたような気がします。でもこれからですね」とL相談員に話した。この支援をきっかけに、L相談員はMさん親子のような課題を持つ方への支援の充実や支援体制の構築が必要と考え、「障害者総合支援法」に基づくP市協議会で検討することを提案してきた。(問題60)