問題58/第20回(平成29年度)/精神保健福祉士(専門)
精神保健福祉の理論と相談援助の展開
次の事例を読んで,問題58から問題60までについて答えなさい。
Aさん(40歳,女性)は,18歳で統合失調症を発症し,入院経験がある。受診は継続し,時々対人緊張が強くなったり幻聴体験はあるが,自分で対応できている。夫が代表の農業法人に勤め,子ども(7歳)がいる。次のうち,この時のBさん(精神保健福祉士)が感じた倫理的ジレンマの内容として,適切なものを1つ選びなさい。
Bさん(45歳,女性,精神保健福祉士)は,以前,Aさんの受診先の精神科病院に勤務し,初診時からの担当であった。5年前に退職し精神保健福祉士事務所を開業,スクールソーシャルワーカーとしても勤務している。
Bさんの退職後,AさんとBさんは,それぞれの子育ての悩みを話し合ったことをきっかけに,時々会って話をする関係を続けていた。その後,地域で子育てサークルを始め,今ではメンバーが増え,子どもたち向けの活動も行うようになり,Aさんは会長,Bさんは事務局長として会を運営している。
ある日,勤務している学校で,精神障害のある母親(Cさん)と行動障害があるその子どもへの支援を検討する中で,この子育てサークルの活用が提案された。それを受けてBさんはCさんに「親子の情報を事前に会のメンバーに知らせ,理解しておいてもらった方がよい」と提案したが,Cさんは,「参加したいが病気や障害のことは知られたくない」と訴えたため,Bさんは,倫理的ジレンマを感じながらもサークルでの支援を進めた。(問題58)
初回参加時のその子の落ち着かない言動とCさんの子どもへの対応に,会のメンバーからは,「一緒にやっていくのは無理」という声が多く上がった。Bさんは,Cさん親子と会のメンバー両者の利益を視野に入れながら話合いを重ねた。Aさんの体験談もメンバーに大きな影響を与え,最終的にメンバー全員の了承が得られた。(問題59)
これを契機に,メンバーの福祉課題への関心が高まり,新しい活動を展開するためにNPO法人の設立を模索することになった。ある日の打合わせ後に,Aさんは,「20歳の頃は人生を諦めていた。病気の経験が人の役に立つなんて思っていなかった。病気のことは心配だし,どこかに引け目はあるけれど,家族,友人,仕事があるし,新しい活動が楽しみ」と語った。(問題60)